ワインの御話
★Wineの呼び方
皆さんは、ワインの事を何と呼んでいるでしょう。

「葡萄酒」と呼んでいる人は少ないかもしれませんね。
この「葡萄酒」、世界各国それぞれの国で呼ばれ方が違います。
英語では wine(ワイン) 、フランス語だと Vin(ヴァン) 、イタリア語では Vino(ヴィーノ)、ドイツ語では wein(ヴァイン)と呼ばれています。更にスペインでは イタリアと同じく Vino(ヴィーノ)、ポルトガルでは Vihno(ヴィーニョ)と言います。

しかし、これらの呼び方の語源は全部ラテン語の "Vinum"(ヴィヌム)から派生したものです。ラテン語で葡萄の木の事を "vitis"(ヴィティス) といいますが、それから造ったお酒というのが "Vinum" です。


★Wineの起源
さて、そのwineの起源についてお話しましょう。

人類最古の文明は既にワインを造っていたと考えられています。他のお酒と同様、例えば葡萄が自然に潰れて発酵するというような事ですね。
人工的に造った証拠としては、紀元前4世紀ごろの遺跡からシュメール人によるワイン壺の封印ロールシールが発見されていますし、ダマスカス南からは搾汁器(石臼)が発掘されています。
この後も、至る所でワインの存在を示す証拠が残されています。
有名なハムラビ法典にはワインの取引に関する決まりが書かれていて、さらに飲みすぎてはいけませんという記述まであります。(気をつけましょう!)

また、聖書には実に521回もワインが登場しており、宗教儀式にも欠かせない物であった事を思わせます。
特に重要なのは、新約聖書の場合"マタイによる福音書第26章" "ヨハネによる福音書第15章" の最後の晩餐のくだりです。ワインがキリストの契約の血であり、キリストが葡萄の木であり11人の弟子たちがその枝であると述べています。
キリストが最後の晩餐でその教えの神髄を説く最高の場面でワインが登場するという事はいかにワインが重要な物であるかをうかがわせます。
 
 
★ローマ帝国の時代
こうしてエジプト、フェニキア、ギリシャで広まったワインはその歴史にとって重要なローマ時代に大きな転換期を迎えます。

古代ローマ人はローマ帝国の勢力拡大と共に各地へワインを広めていきます。特にローマ皇帝ジュリアス・シーザは紀元前58年から51年にかけてガリア(今のフランス)征服の際に葡萄栽培を全ガリアに広めました。
この時のローマ帝国の支配はライン河、ドナウ河流域に及び現在のドイツのワイン生産地域の多くにもローマ帝国からワインが広められました。

ところで、現在のフランスに初めてワインが伝わったのはローマ帝国のガリア征服以前の紀元前600年頃フェニキア人が今のマルセイユを植民地にしたときです。
しかし、それ以上は広がらずシーザーがガリアを征服した頃、ガリア人達は大麦ビールと蜂蜜酒を愛飲していました。
ガリア人はローマ人によって伝えられたワインに魅了され、優れた葡萄栽培者となり、ガリア地方で造られるワインはローマで大評判となりました。
このため後のドミティアヌス帝はローマの葡萄栽培を保護する為、ガリアの葡萄の木の半分を抜かせる命令を出したほどです。
その後プロプス帝がガリアの葡萄栽培権をガリア人に与えるなどの施策により再びガリアでのワイン造りが活気を取り戻しています。AD270年の事です。
 
 
★フランク王国
その後、西ローマ帝国が滅亡しガリア地方は今のドイツのフランケン地方に住んでいたフランク族が移動してきてフランク王国が建設されます。
AD768年にはワイン中興の祖と言われるシャルルマーニュ大帝がフランク国王となり、今のドイツからスペインにわたる広大な領地を誇りワイン造りも大いに発展しました。

一方でキリスト教で聖餐用に用いられるワインは特にベネディクト派やシトー派の布教活動と共に各地に広がっていきます。
その中でもブルゴーニュ地方はシトー派の修道院によって多くの葡萄畑が開墾され、ブルゴーニュ公国の繁栄とともにその名声も高まっていきます。
 
 
★ボルドーがイギリス領に
1137年には、また一つ重大な出来事が起こりました。アキテーヌ公領のエリオノール妃がフランス王ルイ7世から離婚され、アンジュ伯でノルマンディ侯であったアンリ・プランタジェネと再婚します。
この時アキテーヌ地方を持参金としますが、アンリ・プランタジェネがその2年後イギリス国王になったため、今のボルドー地方を含むフランスの南西部が英国領になってしまったのです。
この状態は100年戦争の終結(1453年)まで続きますが、その間ボルドーのワインは「クラレット」という呼び名でイギリス人に楽しまれていました。
 
 
★フランス革命
1789年には有名なフランス革命が起こります。王侯貴族の料理人やサービス係は町に出ることを余儀なくされ、この結果、良質のワインも庶民の口に入るようになりました。
この時にそれまで王侯貴族のワインのサービスを行っていた人達が町に出て、当時誕生しつつあったレストランで働くようになりソムリエが誕生したと言われています。

一方、各地の葡萄畑はそれまで小作人であった農民に分配されました。
このため葡萄畑が小さく分割されることになったのですが、この後、資本力のある家がそれらの葡萄畑を再び買上げ大きな単位にまとめたのがボルドー地方であり、小作人に分配され更にその子孫に受け継がれ、場合によっては更に小さな単位に分割されたのがブルゴーニュ地方です。
現在のボルドーのシャトーが大規模な葡萄畑を持ち安定した品質のワインを出荷するのに対し、
ブルゴーニュはドメーヌという農家単位でそれぞれのワインを製造・出荷し同じ村でも味わいの違うワインが製造されたりするため、畑の単位で格付けがなされているという違いは
主にこのフランス革命以降の経緯によるものです。
 
 
★メドックの格付け
そして1855年フランス万国博覧会が開催されました。
この時に現在までも続いているメドック格付けが誕生しました。
ブルゴーニュと並ぶ上質ワインの生産地ボルドーの中から優れた58シャトー(現在は61)がボルドー仲買人組合によってリストアップされボルドー商工会議所が万博事務局に送り公けになったものです。

この格付けはメドックの場合5つに分類され1級から5級のシャトーが等級付けされています。甘口ワインのソーテルヌは特1級、1級、2級に分類されました。この時、メドック1級に格付けされたワインは

・シャトー ラフィット・ロートシルト
・シャトー ラトゥール
・シャトー マルゴー

の3つのメドック地区のシャトーとグラーブ地区から

・シャトー オー・ブリオン

の4つが選ばれました。毎年、有名な画家によるラベルが使われる有名な

・シャトー ムートン・ロートシルト

は、この時2級に格付けされており、後に1973年に唯一の例外として格付けの変更(1級への昇格)が成されています。
 
 
★メドック(の格付け)とは?
フランスのジロンド河口に広がる地区がボルドー地方の中の「メドック」と呼ばれる地区です。
格付けとは、ワイン初心者の皆様もなんとなく耳にする1級だの2級だの...ってあれのことです。
トップはもちろん1級で下は5級まであり、その下にはブルジョワ級まで存在します。
むろん、メドックの全てのワインに級が付いているわけではなく、無級のものがほとんどを占めています。ということは「ブルジョワ級」でも級がつくだけすごいこと!なのです。
メドック地区では赤ワインだけがA・O・Cで認められています。
つまり、どんなに素晴らしい白ワインであっても、メドック地区産の白ワインはA・Cボルドーになります。

土壌に砂利や砂の多いメドック地区では、主にカベルネソーヴィニヨン種が主体の芳醇でコクがあり、タンニンの強い骨太な赤ワインが造られます。(ジロンド河口近くでは土壌に粘土質が多くなり、メルロー種のブレンドの比率が高まります)
 
 
 
★ワインまとめ(wine/vin/vino)
ブドウを発酵させてできる酒。
発泡性を持たないものはスティル・ワインと呼ばれ、赤・白・ロゼの3タイプがある。
このほか、発泡性を持つもの(シャンパーニュ、スプマンテなど)をスパークリング・ワイン。
発酵後または発酵中にアルコールを添加してつくられたもの(シェリー、ポートなど)をフォーティファイド(酒精強化)ワインという。

ワインづくりは、約八千年前、メソポタミアの先住民シュメール人によって始められたと推測される。その後、BC六百年頃に南フランスに伝わり、ヨーロッパ各地へと広められた。
現在は、フランス、イタリア、スペインをはじめ五十カ国以上で生産されている。
本来、ワインはその生産地で消費される「地ワイン」が原形であるが、都市が発達すると、各産地から都市に供給されるため、ワインを産地名で区別 するようになった。それが「ジェネリックワイン」である。
そのなかで、特に高品質なものが、畑名や畑の所有者名(ドメーヌ、あるいはシャトー)で呼ばれる「ドメーヌワイン」となった。

一方、ニューワールド(アメリカ、チリ、オーストラリアなど)では、新たにヨーロッパの銘醸地からブドウ品種を移植して、それぞれの品種名で呼ばれるワインがつくられるようになった。これが「ヴァラエタル・ワイン」である。


うーん。ワインは深いね。^^

コメント

春紫苑
春紫苑
2006年8月24日0:56

ドイツワインが好きです。貴腐が。

リリファーム
リリファーム
2006年8月24日2:59

いらっしゃいませ「春紫苑」さん。ドイツワインの貴腐ワインがお好きとは!レアもので(気候の関係上)とても甘口で濃厚でコクと旨味のあるワインと聞いています。
美味しそうなワインですね〜。
これからもこのブログに御付き合いを、どうかヨロシク御願いしますね。^^

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